北海道大学大学院先端生命科学研究院の比能洋教授及びブライアン M. モンタルバン博士(論文投稿時は北海道大学大学院生命科学院博士後期課程学生)の研究グループは、野生水鳥72種の卵白中のN-結合型糖鎖(N-グリカン)について硫酸化及びリン酸化に焦点を当てた解析を行い、水鳥の種間における酸性修飾糖鎖構造の違いを発見しました。また、インフルエンザウイルスの感染率が高い水鳥種の卵白では、リン酸化ハイブリッド及び高マンノース型N -グリカンが高度に発現していることを明らかにしました。
インフルエンザウイルスの感受性の違いを決定する因子として、ヒトとトリの間ではシアル酸という酸性糖の修飾が知られています。一方、鳥類内ではシアル酸修飾に加え、糖鎖の硫酸化修飾及びリン酸化修飾の重要性が、近年明らかとなってきました。鳥類においては、糖鎖の硫酸化及びリン酸化修飾構造と種間の特徴を徹底的に調査することが重要です。
研究グループは、同研究院の西村紳一郎教授が開発した糖鎖捕捉技術Glycoblottingを活用し、硫酸化及びリン酸化修飾を受けた微量糖鎖成分の迅速解析技術を開発しました。さらにこの技術を用いて同研究グループが管理している大規模野鳥卵白ライブラリを解析し、水鳥のインフルエンザ感染率に関する糖鎖修飾の潜在的重要性を見出し、提案しました。
この成果は、鳥類集団内でのインフルエンザウイルスの伝播と進化に影響を与える要因について系統的な理解をもたらし、感染対策への重要な指標を与えるものです。
本研究成果は、2024年1月3日(水)にACS Infectious Diseases誌にてオンライン掲載され、 2024年1月11日(木)に北大ホームページにてプレスリリースされました。
【北大プレスリリース】水鳥のインフルエンザ感染では糖鎖の硫酸・リン酸修飾が重要~トリ卵白の大規模分析により、糖タンパク質の酸性糖鎖修飾パターンとの相関を解明~(先端生命科学研究院 教授 比能 洋)