アルツハイマー病やパーキンソン病は、脳の神経細胞が減ることで認知や運動の機能が低下してしまう病気です。こうした神経変性疾患の原因について研究しているのが、藤本 愛(ふじもと あい)さん(生命科学院 生命融合科学コース 博士後期課程3年)です。プレスリリース「凝集体形成による細胞毒性を抑えるRNA配列を発見」(2024年9月27日)について、藤本さんに話を聞きました。
―研究の対象となったALSは、どのような病気ですか?
ALS(筋萎縮性側索硬化症)も神経変性疾患の一種です。タンパク質の固まり(凝集体)が、運動神経の中にたまってしまう病気です。凝集体がたまると運動神経が死んでしまい、体を動かしたり呼吸をしたりするための筋肉が弱ってしまいます。
―どのような研究をしたのですか?
以前の研究から、ある種類のRNA(リボ核酸)がALSの原因タンパク質に結合し、凝集体の形成を抑えることは分かっていました。RNAは、長い鎖の上に塩基と呼ばれる部分がずらっと並んだような構造をしています。RNAが持つ塩基には4種類あり、塩基の並び方(配列)によってRNAの働き方も変わります。どのような塩基配列を持つRNAが、結合し凝集体の形成を抑えられるか調べました。
―結果はどうなりましたか?
タンパク質に結合し凝集体の形成が抑えられるような、RNAの塩基配列を2種類見つけました。また、これらのRNAが細胞死を防ぐことも確認しました。
―苦労したことは何ですか?
実験に使うタンパク質は、容器で育てた細胞に作らせてから、集めて液体の状態にします。凝集体を作るようなタンパク質は、固まりやすく液体になりにくいため、十分な量を集めるのに苦労しました。
―発見したRNAで、病気は治療できますか?
RNAから薬を作れたとしても、脳の中の神経系まで届けるのは難しいのが現状です。脳は生物にとって大切なので、余計なものを入れさせない仕組みがあるのです。
―薬が実現するといいですね。
神経変性疾患は完治させる方法が見つかっていません。今回の発見が治療薬などにつながることを期待しています。
関連サイト
プレスリリース:凝集体形成による細胞毒性を抑えるRNA配列を発見~筋萎縮性側索硬化症など神経変性疾患の治療薬など発展に期待~(2024年9月27日)