北海道大学大学院先端生命科学研究院の中村公則教授と森永乳業株式会社の清水由宇研究員らの研究グループは、1歳前後の離乳期に腸内のビフィズス菌が多い子では、腸内細菌叢の成熟がみられる3歳時点においてもビフィズス菌が多いことを示し、この離乳期における腸管へのビフィズス菌の定着に腸管自然免疫の作用因子であるαディフェンシンが寄与することを初めて明らかにしました。
北海道岩見沢市の子どもたち33名を生後3年間にわたり経時的に追跡調査した本研究は、ヒトの腸内において健康への寄与が知られている代表的な常在菌の一つであるビフィズス菌と、ヒト自身の免疫システムであるαディフェンシンの関連に着目することで、長期にわたる良好な腸内細菌叢形成の基盤づくりにおける離乳期の重要性を明らかにした画期的な成果です。今後、食事などを通じた離乳期の腸内細菌叢とαディフェンシンからなる腸内環境への効果的な介入手法を開発することで、腸内細菌叢の破綻が関わる様々な疾患リスクの低減を通じた生涯のウェルビーイング向上に貢献することが期待されます。
なお、本研究成果は2025年7月1日(火)公開の国際学術誌Communications Medicineにオンライン掲載されました。
【ポイント】
- 離乳期にビフィズス菌が多い子は、腸内細菌叢が成熟する3歳時点でも多くのビフィズス菌を維持。
- 離乳期にαディフェンシン分泌量が多い子は、ビフィズス菌の腸管定着を促進。
- 将来の疾患リスク低減につながる、乳幼児の腸内環境に着目した新しい栄養アプローチ開発に期待。

プレスリリース:離乳期のαディフェンシンがビフィズス菌の定着を促す~乳幼児の腸内環境と将来の健康をつなぐ自然免疫の働きを初めて解明~(先端生命科学研究院 教授 中村公則)