先端生命科学研究院では所属の研究者(教員、博士研究員、博士後期課程学生)に対し、海外でセミナーを実施する等、国際的なネットワークを形成するための海外渡航費支援を行っています。
支援を受けた学生のレポートを紹介します。
光とDNAで広がる世界
Madappuram Cheruthu Nusaiba
(マダプラム チェルドゥ ヌサイバ)
ソフトマター専攻・博士後期課程・3年(当時)
アメリカ、アリゾナ州立大学
2025年2月17日~23日
渡航目的は、DNAナノテクノロジーおよびその応用について学ぶことでした。また、共同研究への参加、先端的な科学技術への理解を深めること、そして将来的な共同研究の可能性を探ることも目指しました。
アリゾナ州立大学の Nicholas Stephanopoulos 先生の研究室を訪問し、「海外訪問:分子科学および光応答系の進展」というタイトルでセミナーを行いました。ホスト研究室のグループミーティングが行われ、ジャーナル論文発表、研究進捗報告、そして私自身のプレゼンテーションがありました。私は、自身の学術的・科学的背景、修士課程における「糖検出のためのBODIPY蛍光センサーの比率的測定と求核反応の追跡」研究、博士課程における「可視光光応答分子の開発とフォトファーマコロジーへの応用」研究について発表しました。
ディスカッションでは、ホスト研究室との共同研究の可能性についても検討されました。具体的には、有機光応答分子と自己集合型DNAナノテクノロジーを統合し、薬物送達のための光制御型DNA自己組織化系の構築について議論しました。

研究室訪問では、ホスト研究室の研究内容(自己集合分子を用いた機能性ナノ材料の設計・合成・応用)について紹介を受けました。滞在中、タンパク質精製およびウエスタンブロット法の実習を経験しました。また、Timothy Long 教授の研究室(高分子構造と重合プロセスを専門)を訪問し、研究施設の見学を行いました。
ホスト研究室のポスドクと、バイオセンサー用途の光応答性ポリマーブラシの合成について議論しました。
アリゾナ州立大学で開催された学際的講義シリーズ「Eyring Lecture」に参加し、Samuel I. Stupp 教授による「エネルギーおよび先端医療のための生体模倣超分子材料設計」に関する講義を聴講しました。

この貴重な経験は私の今後の研究に大きな影響を与えました。ホスト研究室との共同研究の可能性は、私の研究をさらに発展させるチャンスです。特に、有機光応答分子とDNAナノテクノロジーの融合は、バイオメディカル応用に向けた光応答システムの開発という私の興味と一致します。また、光応答性ポリマーブラシとバイオセンサーの統合により、光制御による抗体などのバイオ認識分子を活用した高感度・高選択性センサーの開発にも興味を持ちました。
この経験を通じて、学際的研究の重要性を再認識し、研究への情熱が一層高まりました。また、技術的スキルの向上や、異分野の融合に関する理解を深めることができました。強固な学術的ネットワークの構築が将来の共同研究に不可欠であることも実感しました。
DNAナノテクノロジーと光応答分子の組み合わせから得られた知見を活かし、今後も多分野融合型の研究を推進し、同様の分野に他の研究者も巻き込んでいきたいと考えています。
