細胞機能イメージングとタンパク質凝集体のイメージング解析
細胞内ではタンパク質の折り畳み(フォールディング)・分解、細胞内遺伝子ネットワーク、分化シグナルの伝達など様々なシステムが稼動している。このような細胞のシステムの機能創生・変換を総合的に理解するために、蛍光相関分光(Fluorescence Correlation Spectroscopy)イメージング法の確立を目指す。FCSは単1分子検出に基づき非常に高感度であるが、生細胞測定へ応用する場合、細胞内の任意の点を1点ずつでしか測定出来ないことが問題であった。それを解決するため、我々はホログラフィ技術を利用した新しい多点同時蛍光相関分光装置の製作に挑んでいる。
また、ミスフォールドしたタンパク質が凝集体を形成する原因についてFCSを用いて解析した。これまでの結果、神経変性疾患のひとつである筋委縮性側索硬化症(ALS)の原因と考えられている変異型SOD1タンパク質が脱凝集時に細胞毒性を獲得する可能性があることを示した。さらに、近年ALSの原因として着目されているTDP43タンパク質のカルボキシル末端側断片が凝集する過程について詳細な知見を得ることができた。これらの結果は、神経変性疾患における神経細胞死が、凝集体をつくりやすいタンパク質のオリゴマー化と密接なかかわりがあることを示唆しており、そのような解析にFCS装置が有効であることを示すものである。
図の説明
- 蛍光相関分光装置の研究風景。
- 培養細胞内のタンパク質凝集体をGFPで可視化したもの。
- 蛍光相関分光装置によるタンパク質凝集体形成の解析結果。
(左)ALS関連TDP43タンパク質の25 kDa C末側断片のFCS測定結果。
(右)ALS関連TDP43タンパク質のFCS測定結果。