2008年度

科学技術振興調整費 先端融合領域イノベーション創出拠点の形成

  • 研究期間 :平成18〜27年度(平成20年度再審査により継続課題に決定、平成24年度に中間評価を予定)
  • 研究課題名:「未来創薬・医療イノベーション拠点形成」
  • 総括責任者:総長 佐伯 浩
  • 担当部局:先端生命科学研究院、医学研究科
  • 協働機関:塩野義製薬 社長 手代木功、 日立製作所 社長 川村 隆

概 要

本プロジェクトでは、患者さんの生活の質(QOL)を最優先したタンパク修飾技術を用いた次世代創薬と光計測技術を用いた個別化医療との融合を具体的な出口とし、そのための実践的研究と人材養成のための拠点を形成する。近年の創薬開発研究はバイオベンチャーと連動した欧米メガファーマが先行している。また、医療診断治療機器は、他国の巨大企業による寡占が進み、我が国の国際競争力の低下が加速している。この状況を打破し、我が国から国際市場に次世代医薬品や次世代医療機器を系統的に生み出し、タンパク修飾技術と個別化医療それぞれの市場での世界標準化につなげるため、産学協働研究に最適な北海道大学のキャンパス内に未来創薬拠点と未来医療拠点を設け、それぞれ塩野義製薬と日立製作所が協働機関として参加する。

まず北大の創薬グループと塩野義製薬は、タンパク製剤の薬効を制御できる糖鎖修飾などによる患者QOLを高める医薬品開発研究や疾患特異的タンパク質同定と機能解析を元にした新たな診断薬開発研究を行う。一方、北大の医療グループと日立製作所は、定量性を向上した半導体PETの実験及び臨床応用の開発研究を行う。さらに、両グループの研究領域を融合することで、半導体PETによる小動物・ヒトの生きたままでの薬物動態の定量による迅速で正確な創薬方法の新たな世界標準化を目指す。また、新たな糖化合物などを用いた独自の診断薬を開発し、半導体PETにより体内の生体機能の微小な変化を非侵襲的かつ超早期に局在診断し最適な治療に結びつける。これらを通して、大学および各企業それぞれでイノベーションを指向した未来創薬・未来医療の先端融合領域を担う人材育成を行う。

概ね5〜7年後までに創薬と半導体PET計測技術の核となる技術シーズを確立し、その後は、本研究が2つの企業と大学が研究協力することによる融合の相乗効果を狙う。本拠点は、創薬側からみると、高精度PET利用による新薬の体内動態や効果判定が的確に行うことのできるトランスレーショナルリサーチの貴重な拠点となる。他方、先端医療側からみると、最新診断薬や次世代医薬品候補を他に先駆けて試用できる先端的医学研究拠点となる。10〜15年をかけて、創薬と医療機器開発のネットワークをリンクすることで、現時点では各企業にも想像しにくい、これまでに例のない分子生命科学と先進医療工学の融合した統合的創薬・医療システムの先端融合領域拠点を形成する。

特別教育研究経費 研究推進(戦略的)プロジェクト

  • 研究期間:平成20~24年度
  • 事業名 :「次世代ポストゲノム研究・開発プロジェクト」
  • プロジェクト代表者:次世代ポストゲノムセンター長 五十嵐靖之

概 要

我が国が得意とするタンパク質、脂質、糖鎖等の次世代ポストゲノム研究を集中的に推進することにより、実用的新薬並びに疾患診断技術開発を加速させる戦略的基盤研究と人材育成を行うとともに、我が国の戦略的創薬研究の中核的責任を負い、国際的優位性を保つ。

JST先端計測分析技術・機器開発事業

  • 研究期間:平成16~20年度
  • 研究課題名:「疾患早期診断のための糖鎖自動分析装置開発」
  • 代表研究者:西村紳一郎

概 要

一滴の血清などから、現在の数100倍の速さで全自動で糖鎖を分析する、世界初の「糖鎖自動分析装置」を開発する。癌や各種生活習慣病などで発現が変化する糖鎖の異性体構造を含む20種類以上の構造と量の解析を実現する。医療費の高騰や高齢化社会など、疾患予防診断の必要性が益々増大しているが、疾患により変化する糖鎖の解析は予防診断上不可欠な技術であり、本技術の開発により社会貢献を目指す。

文部科学省地域科学技術振興施策 知的クラスター創成事業(第二期)

  • 研究期間:平成19~24年度
  • 研究課題名:「さっぽろバイオクラスター Bio-S (The Biocluster for Success from Science at Sapporo)」
  • 総括責任者:事業総括・鈴木文夫、研究総括・五十嵐靖之

概 要

北海道大学、旭川医科大学、札幌医科大学の3大学が中心となる産学官連携プロジェクト。健康食品など食品関連製品の機能を正しく評価し、未来の世界のために新しい食品・化粧品・医薬品を創造する、地域振興を目的とする産学官連携クラスター事業です。本事業は北海道の優れた素材を科学の力で付加価値を付け、高機能化された食材・食品、化粧品・医薬品原料として市場に提供することを第一のコンセプトとしています。そのためには、素材の新しい機能を評価できるシステム構築及びその機能を反映するバイオマーカーの探索を行います。中期的には国内外の素材も受け入れ、評価していく予定です。

「基礎研究(評価系構築含めて)→素材探索→機能評価(試験)→商品化→審査→製造」という製品製造プロセスの中で、特に「基礎研究」と「商品化」をつなぐ「素材探索」、「機能評価(試験)」を医薬開発レベルの技術と品質で実施します。主に「免疫・アレルギー改善」、「認知機能改善」、「代謝機能改善」に資する機能評価システムの構築及びバイオマーカーの探索を行います。また、事業推進にあたっては、情報とスキルを集結して効率的に研究・事業化協力を行い、成果を最大化・多様化させます。

http://bio-sss.jp/

ターゲットタンパク研究プログラム(文部科学省)

概 要
 タンパク3000プロジェクト等で得られた研究成果や研究基盤(NMRおよびX線結晶構造解析施設等)を活用し、現在の技術水準では構造解析がきわめて難しいものの学術研究や産業振興に重要なタンパク質をターゲットに選定し、高難度タンパク質の構造・機能解析のための技術開発を行いつつ、ターゲットタンパク質の構造と機能の解明をめざす。

「技術開発研究」(4領域)では、タンパク質試料をつくる「生産」、立体構造を明らかにする「解析」、機能を操る「制御」及び生産・解析・制御の情報を効率的に共有化するための「情報プラットフォーム」の技術開発を、また「ターゲットタンパク研究」(3分野)では、「基本的な生命の解明」、「医学・薬学への貢献」及び「食品・環境等の産業利用」に向けてターゲットとなるタンパク質群の構造・機能解析を進める。

  • 研究課題名:「オートファジーに必須なAtgタンパク質群の構造的基盤」
  • 研究期間:平成19~23年度
  • 研究代表者:稲垣 冬彦

 

  • 研究課題名:「神経細胞死に関与する活性酸素発生源の解明と構造生物学的手法を駆使した阻害剤創成」
  • 研究期間:平成19~23年度
  • 研究分担者:稲垣 冬彦

 

  • 研究課題名:「個体NMR膜蛋白質複合体構造解析技術」(ハロロドプシン複合体の個体NMR構造解析と光アニオンポンプ機能変調)
  • 研究期間:平成19~21年度
  • サブテーマ研究代表者:出村 誠

 

  • 研究課題名:「放射光低エネルギーX線利用自動結晶構造解析システムの開発」
  • 研究期間:平成19~23年度
  • サブテーマ研究代表者:田中 勲

 

  • 研究課題名:「細胞内機能発現のための非翻訳RNAの修飾とプロセシングの構造基盤」
  • 研究期間:平成19~23年度
  • サブテーマ研究代表者:田中 勲

NEDO 新エネルギー・産業技術総合開発機構「健康安心イノベーションプログラム」

基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促進技術開発

  • 研究期間:平成20〜22年度
  • 研究課題名:「ヘルパーT細胞を中心とした革新的免疫治療法の開発」
  • 代表研究者:西村 孝司 研究分担者:北村 秀光、茶本 健司
概 要

がん免疫分野において、当初、腫瘍細胞を直接的に殺傷する癌特異的キラー細胞を活性化させるための研究が盛んに行われてきていたが、期待された臨床効果は得られずタイプ1型のCD4陽性ヘルパーT (Th1) 細胞の存在が必要不可欠であることが明らかとなっている。そこで、がん患者に対するTh1細胞を用いた免疫細胞療法を日本で初めて実施するために、当研究室で同定した2種類のがん抗原由来ヘルパーペプチドを用いた第I相臨床試験を遂行する。標的とするがん抗原分子はMAGE-A4およびSurvivinで、幅広い種類の腫瘍に高発現していることが知られている。これに伴い、最初にがん抗原特異的Th1細胞を誘導する際に用いるヘルパーペプチドの安全性を検討するための第I相臨床試験を行なうことで、安全性を確認した後、がん患者から誘導したがん抗原特異的Th1細胞を用いた第I相臨床試験を実施する。

分子イメージング機器研究開発プロジェクト/新規悪性腫瘍分子プローブの基盤技術開発/分子プローブ要素技術の開発

  • 研究期間:平成20〜21年度
  • 研究課題名:「細胞表層の糖鎖発現プロファイルに基づいたがん特異的プローブの開発」
  • 代表研究者:山下 匡
概 要

悪性腫瘍(がん)は、現在、我が国における死因の第1位(全体の約30%)を占めており、がん患者の生存率やQOL (Quality of Life)の向上と診断・治療に係る医療費を抑制するための早急な対策が必要とされている。がんの治療においては、腫瘍の発見と悪性度、進行度の診断をより早期に行うことが重要である。しかしながら、従来の形態診断では腫瘍がある程度の大きさに成長してからでなければ診断が困難であり、その頃には転移が始まっていることがあるため、治療効率や治療後の患者の生存率向上のボトルネックとなっている。このような状況を打破するためには、病変が微小な段階、すなわち早期に診断し得る技術の開発が必要である。本研究課題では、細胞表層糖鎖のグライコフォームの違いに基づいて、糖鎖を直接標的にした検出系の構築と、異なる細胞を可視化するプローブの開発を目指す。さらに、これら技術を医療分野に応用し、新規の診断方法と、これらの技術をルーチン化するための新規プローブの開発を目指す。

糖鎖機能活用技術開発

  • 研究期間:平成18年度~平成22年度
  • 研究課題名:糖鎖認識プローブの作成技術の開発
  • 研究代表者:菅原 一幸
概 要

糖鎖は、タンパク質を修飾し生体内で様々な機能発現の要因になっていることが判明しつつある重要な生体分子である。本研究開発では、これまでに糖鎖工学分野で優位に獲得した技術を活用し、糖鎖の重要な機能解明を推進することにより産業利用に役立てるための技術開発を行なう。

具体的には、生体サンプルから、種々の疾患マーカーなどになり得る極微量の特異的糖鎖を精製・特定し、その機能を分子レベルで効率的に解明するための基盤技術を開発する。さらに、機能が解明され重要と判断された分子構造を選択的に認識させるために、特異的糖鎖認識プローブの製法等を開発する。このようにして、疾患の診断技術の向上等を実現し、創薬や新規治療法開発に資する技術を開発する。

がんトランスレーショナルリサーチ事業(文部科学省)

  • 研究期間:平成16〜20年度
  • 研究課題名:「CHP-HER2複合体で前処理した樹状細胞を用いた第Ⅰ相臨床試験およびその免疫応答等の解析による評価の実施」
  • 代表研究者:西村 孝司
  • 研究分担者:北村 秀光、茶本 健司

概 要

コレステリル疎水化多糖類-抗原蛋白複合体(CHP-HER2複合体)を用いた免疫細胞療法の開発を以下の3点を軸として行なう。①樹状細胞ワクチン第Ⅰ相試験(CHP-HER2複合体)を実施する。本試験では、癌患者より得られた末梢血から樹状細胞(DC)を調整し、CHP-HER2複合体をパルス後再び患者に投与する。投与する樹状細胞ワクチンの安全性と患者生体内で惹起される免疫応答をそれぞれ評価する。②GMP準拠CHP-MAGE-A4複合体ワクチンを用いた第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施するための非臨床試験を行う。MAGE-A4抗原のスクリーニング検査および抗原陽性例での免疫誘導反応を検討する。③ワクチンの免疫学的効果を評価するために必要な免疫モニタリングの標準化を検討する。