北海道大学大学院先端生命科学研究院の北村 朗准教授、同大学大学院生命科学院博士後期課程3年の藤本 愛氏らの研究グループは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症(FTD)の原因となるTDP-43及びその25 kDaカルボキシ末端断片(以下、TDP-25)の細胞内凝集体形成を防ぐとともに、凝集体による細胞毒性を抑えられる短リピートRNAの配列を二種類発見しました(四回繰り返しGGGGCCまたはAAAAUU配列)。
本成果では、まず単一分子検出感度を有する相互作用解析技術である蛍光相互相関分光法(FCCS)を用いることにより、二種類の短リピートRNA配列がTDP-43及び及びTDP-25と結合することが分かりました。特にTDP-25は古典的なRNA認識モチーフの大半と、RNA認識に必要な主要アミノ酸残基が欠損しているにもかかわらず、RNAと結合することを発見しました。次に、これらRNA配列をTDP-43またはTDP-25を発現する細胞へ導入し、TDP-43及びTDP-25の細胞内凝集体形成が減少することを、共焦点顕微鏡観察及び細胞破砕液の生化学的分析から明らかにしました。さらに、TDP-43及びTDP-25の発現により上昇する細胞死がこれらRNAの発現により低減できることを明らかにしました。これらのことから、RNAが抗凝集活性を持つ分子シャペロンのように機能し、細胞内のプロテオスタシスを維持する重要な働きを持つ可能性が考えられます。将来的には、本研究で発見されたRNAの生体内投与及び薬物送達法に加えて安全性が確立されることにより、TDP-43に起因したALS/FTDの予防薬や治療薬として発展することが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年9月23日(月)公開のJACS Au誌にオンライン掲載されました。
【本研究成果のポイント】
- ALSやFTDの原因となるTDP-43タンパク質凝集体形成と細胞死を防ぐRNA配列を二種発見。
- RNAがプロテオスタシスを維持する分子シャペロンのような機能を有する可能性を示唆。
- ALSやFTDなど神経変性疾患の治療薬としての応用に期待。
プレスリリース:凝集体形成による細胞毒性を抑えるRNA配列を発見~筋萎縮性側索硬化症など神経変性疾患の治療薬など発展に期待~(先端生命科学研究院 准教授 北村 朗)