高橋 奏太
ソフトマター専攻・修士課程・1年
物理エソロジー研究室
先端生命科学研究院・生命科学院では所属の大学院生に対する「スキルアップ支援」を実施しています。
対象は、生命科学専攻(生命融合科学コース)またはソフトマター専攻に所属する、「MC-DC一貫短縮修了コース(※)」の学生、及び博士課程への進学を希望する優秀な学生です。学生の研究能力向上のため、学会参加などへの支援を行います。
(※)優秀な学生を対象に、標準修業年限(修士課程2年、博士後期課程3年)を短縮(修士課程1-1.5年、博士後期課程2-2.5年)しての博士学位の取得を目指すコース
支援を受けた学生によるレポートを紹介します。
液晶から生命をのぞく1
生物の研究をしているが、液晶画面ばかりを眺めている。私の研究は、生物の行動と物理法則とを結びつけて簡単な数式で表そうというもので、はっきり言って好き嫌いが分かれる、というのが定説のようだ。ましてや「高分子の機能」とは程遠い。学際の際はキワモノのキワか。一方で、こうした学際的な研究には、様々な学問からおいしいところを頂いてこようとする性質が少なからずあるように思う。今回の「スキルアップ支援」は、そのような需要に応えてくださる懐の広いものであった。
研究で対象としているのは変形菌という、数メートルにもおよぶことのある巨大なアメーバだ。アメーバなのに巨大な体を保ち個体として行動し続けられるということは奇妙なことだが、その秘訣は各部分が自律的に同時並行で動いた結果として現れる合理性にあるとされる。その各部分の動きが数式になっているのだが、「同時並行」というところが難しく、そこをサボったような計算でこれまで進めてきた。神経もろくに持たない変形菌のほうが、私の脳で一生懸命書いたコードより効率良く計算をやっているというわけだ。
負けじと私も同時並行で計算する技術を学ぶべく今回の支援を使わせていただいた。しかしその習得はなかなか難しく、変形菌の謎めいた強かさには感心するばかりである。分野の界隈には生き物に「さん」をつけて呼ぶ人がけっこういるのだが(「アリさん」「カワセミさん」という調子だ)、きっとそれぞれに人間には及ばない能力を見出しての敬称だったのだろう。私も今後見習おうと思う。