カギ「硬さ」だった!がんが悪くなる仕組みを発見膵臓がん、肺がんなどの治療の貢献に期待

北海道大学大学院先端生命科学研究院の石原誠一郎助教、芳賀 永教授、名古屋大学大学院医学系研究科の榎本 篤教授、北海道大学大学院生命科学院博士後期課程の温田晃弘氏(研究当時)、同大学大学院歯学研究院の安田元昭准教授らの研究グループは、がんの悪化には「硬さ」が重要であることを発見しました。具体的には、「硬さ」を認識したがん細胞はATF5と呼ばれる分子の働きを強化することで増殖しやすくなることを突き止めました。この発見により、ATF5の抑制が膵臓がんや肺がんの治療に有効である可能性が示されました。

「癌(がん)」という漢字は病気を表す「疒」と岩を意味する「嵒」でできており、その名の通り岩でイメージされるような「硬い」病気として昔から知られてきました。一方で、がんの「硬さ」が病気自体の悪化に影響を与えるかどうかについてはほとんど不明でした。

研究グループは、独自に開発した「硬さの異なる細胞用の足場」の上に膵臓がん細胞や肺がん細胞を載せることで、「硬さ」ががん細胞に与える影響を調べました。その結果、硬い足場の上のがん細胞はATF5の働きを強化することを発見しました。さらに、ATF5を抑制することで膵臓がん細胞と肺がん細胞が増殖しにくくなることを突き止めました。加えて、実際の患者の膵臓がんにおいてもATF5は硬い部位で働きが強化されていることを確認しました。

本研究の成果は、難治がんと呼ばれている膵臓がんをはじめ、肺がんなどに対する新しい治療法の開発に結び付くことが期待されます。

なお、本研究成果は、2025年2月17日(月)公開のiScience誌にオンライン掲載されました。

【ポイント】
  • がんの悪化には「硬さ」が重要であることを発見。
  • 「硬さ」を認識したがん細胞は、ATF5と呼ばれる分子の働きを強化することで増殖することを発見。
  • ATF5の抑制が、膵臓がんや肺がんの治療に有効であることを期待。

 

「硬さ」によってがんが悪化する。がんは正常よりも硬い。硬いとがん細胞はATF5の働きを強化させて悪化することを発見。

 

プレスリリース:カギは「硬さ」だった!がんが悪くなる仕組みを発見~膵臓がん、肺がんなどの治療の貢献に期待~(先端生命科学研究院 教授 芳賀 永、助教 石原誠一郎)