私たちの体を作る細胞の中に、「凝集体」という固まりができることがあるそうです。それは私たちにとって、いいもの?それとも悪いもの?
北村朗准教授(先端生命科学研究院)は、タンパク質の凝集体について研究しています。2024年5月7日に出されたプレスリリース「光を使った凝集体機能障害とその後の細胞運命解析に成功」について、北村准教授に話を聞きました。
―なぜ、この研究をしようと思ったのですか?
凝集体は、細胞の中でタンパク質がぐちゃっと集まったものです。顕微鏡で見えるため存在は確認できますが、細胞にとっていいものなのか、悪いものなのかを調べる方法がありませんでした。
―どのような方法で研究しましたか?
細胞にストレスを与えると、「ストレス顆粒」という凝集体が作られます。塩分濃度を上げることでストレス顆粒を作らせ、そのあと塩分濃度を元に戻しました。また、光を当てるとストレス顆粒が機能しなくなるように、あらかじめタンパク質に仕掛けをしておきました。
―どのような結果が得られましたか?
ストレスがなくなると、通常のストレス顆粒は少しずつ消えていきます。ところが、機能不全になったストレス顆粒は消えるのが遅れました。内部で分子同士が連結し、離れにくくなったためと考えられます。死んでしまう細胞も増えました。ストレス顆粒は細胞にとっていい作用があり、機能しないことは細胞死にもつながるようです。
―ストレスを与えるために、なぜ塩を使ったのですか?
薬剤も使えるのですが、毒性があり扱いには注意が必要です。そこで、扱いが簡単な砂糖と塩で試してみました。砂糖はダメだったのですが、塩だとストレス顆粒が作られたので、使うことにしました。
―研究結果は、今後どのようなことにつながりますか?
今回の研究では、凝集体の一種であるストレス顆粒に光を当てて機能不全にしました。この方法を応用し、細胞にとって毒になる凝集体を光で消滅させられたらと考えています。凝集体が原因で起こる病気の治療にもつなげたいです。
関連サイト
プレスリリース:光を使った凝集体機能障害とその後の細胞運命解析に成功~遺伝子破壊技術では達成できない細胞内非膜オルガネラの機能解明に期待~(2024年5月7日)