プレスリリースを解説!「ヒト半数体細胞が増えにくい理由を新たに発見」(石原すみれ助教)

石原 すみれ 助教

私たちは父と母から、それぞれの遺伝子をもらいます。そのため各細胞は遺伝子を2コピーずつ持っています。病気などで、遺伝子が1コピーだけの細胞ができることもありますが、そうした「半数体」の細胞は遺伝子を2コピーもつ細胞に比べて増えにくく2コピーの状態に戻ってしまいます。

石原 すみれ(いしはら すみれ)助教(先端生命科学研究院)は、遺伝子のコピー数が変わると、細胞の性質がどう変わるのかについて調べています。プレスリリース「ヒト半数体細胞の増殖が制限される新たな原理を発見」(2024年10月25日)について、石原すみれ助教に詳しい話を聞きました。

 

―どうしてこの研究をしようと思ったのですか?

遺伝子が1コピーだけになった細胞を培養していると、勝手に遺伝子2コピーを持った細胞ばかりになってしまいます。「1コピーのままでいられないのは、なぜだろう?」と思ったことが、研究のきっかけです。

細胞を育てる

―どのような方法で研究しましたか?

細胞が成長・増殖するときには、細胞の中でいろいろなタンパク質が作られています。そのとき、一定の確率で異常な構造を持つタンパク質(不良タンパク質)ができることもあって、そうした不良タンパク質がたまることは細胞のストレスになります。今回の研究では薬剤を使い、細胞に同様のストレスを与え、遺伝子のコピー数によって細胞の生存が変わるかを比較しました。

細胞を一つ一つ測定できる装置

―何が分かりましたか?

ストレスを与えたとき、遺伝子1コピーの細胞は2コピーの細胞に比べて死にやすいことがわかりました。それにより、1コピーの細胞の増殖率が低くなり、2コピーの細胞に徐々に置き換わっていくことがわかりました。

ストレスの要因である不良タンパク質の量を比べたところ、遺伝子が1コピーの細胞では、不良タンパク質がたまりやすいことも分かりました。そこで、不良タンパク質をなくす手助けをしてあげたところ、細胞死が少なくなりました。このことから、不良タンパク質の処理能力の低下が、遺伝子1コピーの細胞を増えにくくしていることがわかりました。

不良タンパク質のストレス(=小胞体ストレス)があると、遺伝子1コピー(半数体、青色)の細胞死が増えるため、結果的に遺伝子2コピー(二倍体、赤色)の細胞が多くなる

―2人のお子さんを育てながら研究することで、苦労はありますか?

一週間かけて実験を仕込み、結果を見ようとした日に子どもが熱を出したりすると、結構大変ですね。そんなときは研究者の夫(同研究院の石原 誠一郎 助教)と、午前と午後で交代して子どもの面倒を見るなど工夫しています。今後も研究者夫婦で協力しながらやっていきたいと思っています。

家族との1枚。右端は夫の石原 誠一郎 助教
関連サイト

プレスリリース:ヒト半数体細胞の増殖が制限される新たな原理を発見~ゲノムコピー数に応じた小胞体ストレス抵抗性の変化が鍵~(2024年10月25日)