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明るいところで見た方が、物は細かい部分まではっきり見えます。顕微鏡で細胞を観察するときも、光を当てて明るくします。ところが、細胞にとって光は毒になってしまうのだとか。
横井 友樹 助教(先端生命科学研究院)は、腸の上皮細胞(腸管内部の表面を覆う細胞)について研究しています。顕微鏡を使うことが多く、光の毒性について気になっていたそうです。横井助教の論文「腸オルガノイドのライブイメージングにおける光毒性が細胞機能に及ぼす潜在的影響」(2024年11月出版)について、詳しい話を聞きました。
―オルガノイドって何ですか?
生体外で培養した臓器の構造や機能を模した細胞の塊で、「臓器(organ)」と「~のようなもの (-oid)」を合わせた造語です。一種類の細胞だけを培養する従来の培養細胞に比べて、いろいろな種類の細胞が立体的に配置されていて、より生体に近い状態で細胞の機能を解析できるため、最近はオルガノイドが盛んに使われるようになりました。
―なぜ、この研究を行ったのですか?
顕微鏡観察で避けることができない「光毒性」の定量的な評価をしたいと考えたためです。実験で細胞に変化が起きたとして、それが実験条件を変えたからなのか、光を当てたからなのかを区別する必要があります。オルガノイドはとても繊細なので、光の影響も大きくなると考えられます。そこで、光を当てるとオルガノイドの細胞で何が起きるのか、詳しく調べました。
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―どのような方法で研究しましたか?
マウスの小腸上皮細胞から小腸上皮オルガノイドを作りました。顕微鏡で小腸上皮オルガノイドに光を当ててから、細胞が持つ遺伝子の情報がどれくらい使われているのかを調べることで、光を当てた細胞がどんな障害を受けているかを明らかにしました。細胞が持つ1万個以上の遺伝子をRNAシーケンシングという方法を使い、一気に調べました。
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(右)小腸オルガノイドの模式図と電子顕微鏡写真
―何が分かりましたか?
細胞の増殖に関わる機能や、細胞内で合成した物質を外に放出するための機能など、光を当てることで多くの細胞機能が障害を受けていました。
また、幹細胞(いろいろな細胞を作り出すときの元になる細胞)は特に光を当てることで障害されやすく、小腸上皮オルガノイドを一週間ほど観察し続けると、変形してしまうことが分かりました。光を当てた瞬間は見た目が変わらなくても、細胞が障害を受けている可能性はあるということです。
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―この研究には、どのような意味がありますか?
遺伝子発現から光が細胞に及ぼす影響を解明したことで、顕微鏡を使う全ての研究者に対して、「普段、大丈夫だと思っている光の量でも、様々な細胞機能に影響する可能性があるので気を付けてくださいね」と注意を促すことができます。自分自身の研究だけでなく、医学・生命科学の研究全般に役立つと考えています。
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元の論文
Potential consequences of phototoxicity on cell function during live imaging of intestinal organoids