プレスリリースを解説!「新素材開発に役立つ!粒子の回転調べます」(新井達也助教)

新井 達也 助教

日常生活でもよく使うプラスチックなどの材料は、軽くて丈夫なことが理想ですよね。そうした材料開発のヒントを与えてくれそうなのが、新井 達也(あらい たつや)助教(先端生命科学研究院)の研究です。プレスリリース「時分割X線回折像から粒⼦の回転を調べる新規⼿法を開発」(2025年10月6日)について、新井助教にインタビューしました。

 

―どうしてこの研究をしようと思ったのですか?

ゴムやプラスチックなどは高分子でできた材料です。高分子材料にナノ粒子(非常に小さい粒子)を混ぜると、強度や耐久性が増すことが分かっています。しかし、「なぜ強くなるのか」という根本的な理由はまだ十分に理解されていません。

高分子とナノ粒子は、くっついたり離れたりと絶えず相互作用しています。そのため、ナノ粒子がどのように動くかが材料の性質を大きく左右します。ただ、材料中のナノ粒子は大きく動けるわけではなく、向きをわずかに変えるくらいです。そこで、ナノ粒子の回転運動を調べることが重要になります。

―どのような方法で研究しましたか?

ナノ粒子を混ぜたプラスチック、ゲル、液体などの高分子材料にX線を当て、その背後で動画を撮影しました。ナノ粒子が特定の向きになった時に、X線が反射(回折)するため、動画ではX線が当たって明るくなる点(輝点)が現れたり消えたりします。

測定のイメージ図:高分子材料にX線を当てて動画を撮影する
大型放射光施設SPring-8(スプリング・エイト、兵庫県佐用町)での測定の様子

撮影した動画。場所によって輝点が現れたり消えたりしている

 

―どのような結果が得られましたか?

液体の中だとナノ粒子は速く回転できます。この場合、輝点の明るさの変化は速くなります。逆に固体材料中ではナノ粒子の回転が遅くなり、輝点の明るさの変化も遅くなります。この明るさのゆらぎを解析することで、ナノ粒子の回転運動を捉えることに成功しました。これは、材料内部で起きている微小なダイナミクスをX線で直接捉える新しい手法として、大きな前進だと考えています。

―今後はどのように研究を進めたいですか?

この手法は、新しい高分子材料の設計・開発に役立つと考えています。今後は、実際の材料開発に携わる研究者の方々に材料を作ってもらい、応用的な測定を行っていきたいです。すでに同じ研究院内で、ゲルを扱う研究室には声をかけており、。さらに企業など外部との共同研究も積極的に進めていく予定です。

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共同研究に興味がある方からの、ご連絡をお待ちしています!

元の論文

Fluctuation of Time-Resolved X-ray Diffraction Reveals the Rotational Dynamics of Nanoparticles in Polymer Materials