公開FD講演会「SDGs勉強会in北大vol.001」を先端生命科学研究院理学研究院で開催

先端生命科学研究院・理学研究院ではファカルティ・ディベロップメント FD講演会を兼ね2018年12月6日(木)に北大総合博物館N308にて「SDGs勉強会in北大vol. 001」を一般公開で開催しました[1]。当日の模様は北海道新聞でも報道されました[2]。

学内外の多数の組織から参加
参加数66名(学内52 [教職員48名、学生4名]、学外14名[企業・団体等11名、他3名])。北大教職員の参加組織:先端生命科学研究院、理学研究院、農学研究院、工学研究院、文学研究科、教育学研究院、低温科学研究所、北方生物圏フィールド科学センター、観光学高等研究センター、北極域研究センター、サステイナブルキャンパスマネジメント本部、人材育成本部、創成研究機構、URAステーション、附属図書館、学務部国際交流課、国際部国際企画課、国際連携機構。北大学生:理学部、農学部、生命科学院、国際広報メディア・観光学院。

開催概要(SDGsに貢献する教育研究へ)
 国連持続可能な開発サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」は、現在、日本政府、民間企業、大学・研究機関、自治体など様々なステークホルダーの分野を超えた取り組みが広がっています。
 一方、経済・社会・環境の側面を持つSDGsは、教育・基礎研究とともに科学技術イノベーション(STI)への期待も大きくなっています。大学等教育研究機関のSDGsへの貢献に注目を集めることが必須の中、文系理系によらず大学人自身の教育・研究へのSDGsの取り組み方や社会の動きについて、さらに理解を深め継続することが重要と考え、今回の「SDGs勉強会in北大vol.001」を企画しました。SDGs活動に詳しい外部講師をお招きし、諸氏の活動の概要紹介を含め、最新情報をご紹介いただきました。第一部最後には、教員や一般参加者から「教育者としてSDGsへの取り組み方」、「バックキャスティングの有用性」など活発な質疑応答が行われました。ある教員からは今回の勉強会で「SDGsはもっと気楽に取り組んでも良い」ということに気づいたことは収穫だった一方で、「社会からの発信に気づくアンテナ」が必要であると改めて認識したとの感想が聞かれました。参加者アンケートでは、SDGsイベントvol.002継続開催、学生向けイベント、地域連携、一般公開の拡張、ワークショップなど多数のご要望をいただきました。

「国連持続可能な開発サミット2015」で193カ国が採択した2016-2030「持続可能な開発目標(SDGs)」。環境・経済・社会のつながりを持ち、大学ではESD教育とともに、STI for SDGs, Society5.0 for SDGs施策に関連する様々なステークホルダーの分野を超えた教育研究の取り組みが期待されています。 [国連広報センター]
北大サステイナビリティ・ウィーク(SW)公式ロゴ
2008年のSW期間中には、世界初のG8大学サミット(札幌)が開催され、国内外27大学が「大学は持続可能な社会実現のための原動力となる」と誓いました。
[北大HP > 国際交流・留学 > 持続可能な社会の実現に向けた取り組み]
2026年(北大創基150年)に向けて「次世代に持続可能な社会を残すため、様々な課題を解決する世界トップレベルの研究を推進する」など5つの達成目標からなる「近未来戦略150」を2014年に策定しました。

講演の概要(3テーマ)

(1)「SDGs達成に取り組む世界の動き」
(講師:SDGs.TV/(株)TREE 代表取締役:水野雅弘氏。ICTや映像技術を活用した環境普及啓発事業やサステイナビリティ人材育成事業のメディアプロデューサーとして活躍中)。

SDGs.TV/TREE 水野雅弘氏

 SDGsの17目標は人間の活動が地球システムに及ぼす影響を客観的に評価する方法の一つである地球の限界(プラネタリーバウンダリー)が基本となったこと、世界の危機的状況を考えるとSDGs達成にはビジネスの土俵を変えることが重要であることが世界的な認識となってきたこと、そのためのダイベストメント、ESG投資など効果的な循環経済についても紹介されました。日本の劇的な社会変化や社会課題(少子高齢化など)が多岐に渡る中で、大学の社会的役割や意義・可能性が問われています。社会と繋がる大学を見える化するには、「大学の研究や教育プログラムなどをSDGsのターゲットから統合検索ができるようになると、目標と学びの世界が変わるだろう」とのご提案もいただきました。またSDGsの取り組みは道内でも盛んで、農林水産業などの地方講演、札幌チカホの中高生へのSDGs啓発イベントなども行われ、水野氏も数多く訪問しています。さらに全国イベント(SDGsクリエイティブアワード、札幌開催、2019年3月)など紹介されました。北海道で SDGs達成に向けたアクションを加速させるために、北海道大学の役割や可能性ははかりしれないとの期待も述べられました。

(2)「科学技術イノベーション(STI)と SDGs 」(講師:科学技術振興機構・経理部長(前「科学と社会」推進部長)柴田孝博氏、同機構・経営企画部持続可能な社会推進室・植田奈穂子氏)

科学技術振興機構 柴田孝博氏
科学技術振興機構 植田奈穂子氏

 科学技術振興機構(JST)では2018年4月1日より「持続可能な社会推進室」を設置し機構全体でSTI for SDGsを推進しています。柴田氏からは科学技術基本計画等における「科学と社会」の関係からの考察が紹介されました。また植田氏からは、SDGsに対する政府指針、経済界の動向、他大学の取り組み等が紹介されました。内閣府が推進するSDGs未来都市は全国29か所のうち4か所が北海道。文部科学省では、2018年8月に「STI for SDGs文部科学省施策パッケージ」を策定し、異なる施策の有機的連動、多様なステークホルダーとの連携・共創が進められています。JST「持続可能な社会推進室」では、日本のSDGs取り組み事例を紹介するウェブページを作成し、国内外に対して積極的に情報発信を行っています。

(3)「北大の科学技術研究教育とSDGs、その先の、道へ」(講師:北海道大学先端生命科学研究院長・出村誠氏)

先端生命科学研究院長 出村誠氏

北大の先駆的な「持続可能な開発」国際戦略2005と近未来戦略150 (2014-2026)
 北大は創基150年にあたる2026年に向けて「次世代に持続可能な社会を残すため、様々な課題を解決する世界トップレベルの研究を推進する」など5つの達成目標からなる「近未来戦略150」を2014年に策定しました。この策定に至る開花は、2005年の1粒の小さなタネ(北大「持続可能な開発」国際戦略策定)に遡ります。その後、2008年G8北海道洞爺湖サミットでは世界経済とともに環境問題・気候変動がクロースアップされました。これに呼応し国内外27の大学・機関による世界初のG8大学サミットが札幌で開催され、「大学は持続可能な社会実現のための原動力となる」と誓いました(札幌サステイナビリティ宣言(SSD)。2007〜2016年には北大サステイナビリティ・ウィーク(SW)を毎年開催し、サステイナブル教育が定着しました(2014年まで累計250企画突破15万人参加)。

SDGsへの取り組みが見える教育
 SW2016は「SDGsに貢献する高等教育のあり方」がテーマとなりました。2005年の1粒の小さなタネが2016年に大きく成長しましたが、SDGsへの貢献という開花・結実に向けて北大の役割がさらに増すことが再認識されました。
 また同時期にサステイナビリティ教育検討プロジェクトチームによる「サステイナビリティ教育の在り方について(答申)H29.1.5」が行われ、シラバスにSDGs17目標を設定できる機能追加など教員と学生のSDGsへの意識付けを促す教育環境の改善提案も行われました。
 2017年からSWはHokkaidoサマー・インスティテュート(HSI)の開講期間に合わせ、さらに世界と協働する方式に拡大されました。HSIでは、北大全部局が様々な分野・課題・テーマ(100科目以上)を提供し、国際協働が求められるSDGs関連の学習機会を北大SIから世界へ発信しています。

研究教育とSDGs、その先の、道へ
 北大の研究事例では世界の課題解決に向けた全部局の構成や研究所・センターの紹介、ESD推進事業や世界の課題解決に挑む学生の主体的活動などが紹介されました。SDG目標9は産業と科学技術の基盤を作る貢献。北大GI-CoREを始めWPI、COIなどSTI国家研究プロジェクトが将来SDGsの貢献につながる期待、具体例としてソフトマターのコンセプトカー開発や環境負荷低減への期待が紹介されました。「近未来戦略150」に向けた世界トップレベルの研究は、まさに「SDGs未来社会」に貢献することに他なりません。その実現には人材育成そして地域・北海道との連携パートナーの重要性も述べられました。

学内外からの来場者
講演後の熱心な質疑応答

謝辞 
今回の企画運営にあたり協力いただきました(学内)附属図書館、人材育成本部・L-station、URAステーション、大学の世界展開力強化事業(PARE, RJE3, STSI)、事務局関係課、および(学外)北海道・北海道SDGs推進ネットワーク、環境☆ナビ北海道の関係者皆様に厚く御礼申し上げます。
(生命科学院・先端生命科学研究院、理学院・理学研究院・理学部)

参考サイト
[1] https://life.sci.hokudai.ac.jp/fa/event/6049
[2] 北海道新聞夕刊2018.12.10

北大時報2019年1月号掲載, p30