脳と筋肉をつないでいるのは神経細胞です。神経細胞がなくなってしまう病気にかかると、体をうまく動かせなくなります。原因とされているのは、神経細胞の中にできる「凝集体」というタンパク質の固まりです。
北村朗准教授(先端生命科学研究院)は、タンパク質の凝集体について研究しています。2024年6月21日に出されたプレスリリース「ALS/FTDの原因となる凝集体形成機構を解明」について、北村准教授に話を聞きました。
なぜ、この研究をしようと思ったのですか?
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、神経細胞がなくなってしまう病気の一つです。ALSの患者さんから見つかったタンパク質の断片が、どのように凝集していくのかを明らかにしたいと思いました。
どのような方法で研究しましたか?
光を当てると凝集が始まるように仕掛けをして、タンパク質断片の集まり方を解析しました。また、線虫という0.5ミリメートルほどの生物を使い、運動機能や寿命が凝集体から受ける影響を調べました。
どのような結果が得られましたか?
タンパク質断片が、構造変化して集まっていく過程を解明できました。今後、断片同士の間に挟まるような薬剤を作れれば、病気の治療や予防につながるかもしれません。
また、硬くて動きにくい凝集体が形成されると、線虫の運動は鈍くなり、寿命も短くなることが分かりました。凝集体の性質が、生物の活動や寿命に影響するようです。
苦労したことは?
線虫の寿命を調べるためには、毎日欠かさず、生き残っている線虫を数えなければなりません。実験を始めると40日間は休めず、体調も崩せない緊張感があります。
学生も活躍したそうですね。
線虫の実験系の立ち上げや、論文化に必要なデータの取り直しなど、学生たちのがんばりがあって結果を出せました。データを取り始めたのが約10年前。それからいろいろな出来事や人間模様がありました。振り返ると感慨深いです。