
チョウのオスはメスより早めに羽化するのが一般的です。交尾回数を増やす作戦のようです。ところが、オオウラギンヒョウモンというチョウは少し変わっていて、メスと同じ頃に遅めに羽化するオスも存在します。なぜでしょうか?
この謎に、数学を使って挑んでいるのが久保 日嵩(くぼ ひだか)さん(生命科学院 生命融合科学コース 博士前期(修士)課程2年)です。数理生物学研究室に所属する久保さんに、詳しい話を聞きました。
どうしてこの研究をしようと思ったのですか?
細胞や微生物を研究している人が周りには多いのですが、自分は目に見える大きさの生物に興味がありました。そこで指導教員である山口諒助教と相談して、研究テーマにチョウを選びました。
どのように研究しましたか?
山口助教が採取したオオウラギンヒョウモン39匹について、前ばねの長さを測定して体の大きさを調べました。さらに数理モデルを作って羽化(さなぎから成虫になること)のパターンを計算しました。
どの時期にどれぐらいの数が羽化するのか、またどれぐらい生存しているのかを計算から求めます。先行研究を参考にして新たな数理モデルを作り、プログラミング言語で計算しました。

どのようなことが分かりましたか?
オオウラギンヒョウモンには2種類のオスが存在することを確かめました。「早く羽化する小さいオス」と「遅く羽化する大きいオス」です。早く羽化することと大きな体を持つことは、両立しにくいと考えられます。また数理モデルの解析により羽化前後の死亡率や、大きいオスの繁殖の有利さによって、羽化のタイミングが変化することが予測されました。

研究結果は、どのようなことに役立ちますか?
同じような羽化パターンが他の生物でも見られるかどうか、実際に生物を調査している研究者が探すきっかけになればと思います。また、羽化パターンが二種類あったり、オスやメスが二種類いたりする場合に、今回の結果が現象の理解に役立つと考えています。
今後はどのような研究をしたいですか?
数理モデルの魅力は、物事をある程度一般化して捉えられることです。今後は、他の生物や現象にも注目して、数理モデルを使った研究を続けていきたいです。
