スタッフ

大村 拓也助教 (OHMURA Takuya)

研究室
物理エソロジー研究室
研究テーマ
流体中の微生物生態に潜む力学機構
研究キーワード

繊毛虫、バイオフィルム、細胞遊泳、マイクロレオロジー、マイクロ流体工学、流体数値計算、ライブセルイメージング、機械学習を用いた画像解析

研究内容

自然界には数多くの微生物が生息しており、生態系の一部として重要な役割を担っている。顕微鏡で彼らを眺めてみると、自由に泳ぎ回ったり、コロニーを作ったりと、その生態は多種多様である。共通しているのは、外部環境に適応した生存戦略をとっている点である。高温・低温でよく増殖したり、光合成をしたり、嫌気性を持った微生物は細胞内部の代謝系が外部環境に適応していると言える。分子生物学によって代謝への理解が進んでいる一方で、微生物が実空間で生活している以上、水面・壁面といった境界条件や環境中の流れなど、力学的な外部環境が生態にもたらす影響も無視はできない。したがって微生物の生態は細胞内代謝のみならず、力学的視点から見ても最適化されているのでは?という疑問が出てくる。

その疑問を解決するため、ライブセルイメージングと画像解析によって一細胞レベルで微生物の動向を定量化し、様々な物理モデルを使った観測結果の検証を通して、微生物生態の背景にある力学機構を明らかにする研究を行っている。例えば流体力学モデルを使うと、淡水性の繊毛虫が海に流されない要因は2つの力学条件に集約されることが分かる。ソフトマター物理学モデルを使うと、バクテリアコロニーは同一コロニー内でも柔らかい箇所と硬い箇所があることが測定できる。研究対象によってごとに適切な物理理論を使い分けることで、微生物が示す多様な生態現象にアプローチしている。

担当学部・大学院

メッセージ

生物学の視点から微生物を見ると、ゾウリムシやミドリムシといった真核生物をはじめ、原核生物のバクテリアなど様々な分類があります。ここで微生物の動きに着目し、「泳ぎ方」によって流体力学の視点から微生物を分類すると、3つの系統に分かれます。この系統の一つにはバクテリア、古細菌、原生生物、(微生物ではないですが哺乳類の精子)の仲間がそれぞれ含まれており、遺伝子分類学とは全く異なる指標で生き物を捉えることができます。

自身で観察した生き物の振る舞いを物理学・数学を通して系統化し、これまでになかった指標を作り出す喜びを皆さんと共有したいと思っています。

代表的な研究業績

Takuya Ohmura, Dominic J. Skinner, Konstantin Neuhaus, Gary PT Choi, Jörn Dunkel, Knut Drescher: “In vivo microrheology reveals local elastic and plastic responses inside three‐dimensional bacterial biofilms”
Advanced Materials, 36(29), 2314059 (2024). doi: 10.1002/adma.202314059
– editor’s choice

Eric Jelli*, Takuya Ohmura*, Niklas Netter*, Martin Abt, Eva Jiménez‐Siebert, Konstantin Neuhaus, Daniel K. H. Rode, Carey D. Nadell, Knut Drescher: “Single‐cell segmentation in bacterial biofilms with an optimized deep learning method enables tracking of cell lineages and measurements of growth rates”
Molecular Microbiology, 119(6), 659-676 (2023). *equally contributed, doi: 10.1111/mmi.15064
– cover of issue, editor’s choice

Takuya Ohmura*, Yukinori Nishigami*, Atsushi Taniguchi, Shigenori Nonaka, Takuji Ishikawa, Masatoshi Ichikawa: “Near-wall rheotaxis of the ciliate Tetrahymena induced by the kinesthetic sensing of cilia”
Science Advances, 7(43), eabi5878 (2021). *equally contributed, doi: 10.1126/sciadv.abi5878

Saori Suda, Tomoharu Suda, Takuya Ohmura, Masatoshi Ichikawa: “Straight-to-Curvilinear Motion Transition of a Swimming Droplet Caused by the Susceptibility to Fluctuations”
Physical Review Letters, 127(8), 088005 (2021). doi: 10.1103/PhysRevLett.127.088005
– cover of issue

Takuya Ohmura*, Yukinori Nishigami*, Atsushi Taniguchi, Shigenori Nonaka, Junichi Manabe, Takuji Ishikawa, Masatoshi Ichikawa: “Simple mechanosense and response of cilia motion reveal the intrinsic habits of ciliates”
Proceedings of the National Academy of Sciences USA, 115(13), 3231-3236 (2018). *equally contributed, doi: 10.1073/pnas.1718294115

researchmap参照
https://researchmap.jp/takuyaohmura?lang=ja

備考

<オフィスアワー>
・訪問受け入れ日時:講義期間中はいつでも
・居室:電子科学研究所 2階 02-107
※不在の場合があるため下記メールアドレスへ事前連絡の上来室してください。
takuya.ohmura[at]es.hokudai.ac.jp

所属