スタッフ

芳賀 永教授 (HAGA Hisashi)

研究室
細胞ダイナミクス科学研究室
研究テーマ
上皮細胞の集団運動と3次元形態形成、がん細胞の浸潤運動
研究キーワード

細胞の集団運動、3次元形態形成、がんの浸潤

研究内容

■軟らかい基質を用いた上皮細胞シートの3次元形態形成
胚発生や組織形成において細胞の集団は3次元の形態を形成します。この際、細胞を取り囲む環境の物理的な性質(軟らかさ、空間的な制限)が細胞集団の振る舞いに影響を与えます。我々はこれまでに上皮細胞のシートを軟らかいコラーゲンゲル中で重層培養することで管腔構造を形成させることに成功しました。さらに、粘性に富む培養基質を用いることで小腸の絨毛のような3次元形態を形成させることに成功しました。現在は、ゲルカプセルを用いた初期胚モデルの培養系構築などを行っています。

■基質の硬さに誘引される癌細胞の悪性化機構
細胞を取り囲む基質が硬くなると癌細胞の悪性度が増すことが近年明らかとなってきました。例えば、乳癌の悪性腫瘍は健康な組織に比べて硬く、しこりとして感知することができます。我々はこれまでに大腸癌の細胞を硬さの異なる基質で培養することで、悪性度の指標となるMMP-7というタンパク質の発現が上昇することを明らかとし、さらに、YAP、EGFR、integrin、MRLCを介するシグナル経路を同定しました。現在は、すい臓癌における腫瘍組織の硬化と悪性化について研究を行っています。

担当学部・大学院

メッセージ

生命の最小単位である細胞は、動物・植物問わず生体内で集団として協調的に振る舞い、3次元の形をもつ様々な組織・臓器・個体を形成します。細胞の遺伝子には3次元の形に関する情報は書かれていないため、生物学に残された大きな謎とされています。我々は細胞とその周囲の物理的性質との関係に着目し、3次元形態形成のメカニズムの解明を目指しています。さらに、その関係性が破綻することで細胞が癌化し、悪性度が増すという観点から癌という病態の解明を目指しています。

代表的な研究業績

K. Onishi, S. Ishihara, M. Takahashi, A. Sakai, A. Enomoto, K. Suzuki, and H. Haga: Substrate stiffness induces nuclear localization of myosin regulatory light chain to suppress apoptosis, FEBS Letters, 597, 643-656 (2023).

S. Ishihara, H. Kurosawa, and H. Haga: Stiffness-Modulation of Collagen Gels by Genipin-Crosslinking for Cell Culture, Gels, 9, 148 (2023).

S. Ishida-Ishihara, R. Takada, K. Furusawa, S. Ishihara, and H. Haga: Improvement of the cell viability of hepatocytes cultured in three-dimensional collagen gels using pump-free perfusion driven by water level difference, Scientific Reports, 12, 20269, 1-11 (2022).

Y. Kumagai, J. Nio-Kobayashi, S. Ishihara, A. Enomoto, M. Akiyama, R. Ichihara, and H. Haga: The Interferon-β/STAT1 Axis Drives the Collective Invasion of Skin Squamous Cell Carcinoma with Sealed Intercellular Spaces, Oncogenesis, 11, 27 (2022).

H. Oyama, A. Nukuda, S. Ishihara, and H. Haga: Soft Surfaces Promote Astrocytic Differentiation of Mouse Embryonic Neural Stem Cells via Dephosphorylation of MRLC in the Absence of Serum, Scientific Reports, 11, 19574, 1-11 (2021).

S. Ishida-Ishihara, M. Akiyama, K. Furusawa, I. Naguro, H. Ryuno, T. Sushida, S. Ishihara, and H. Haga: Osmotic Gradients Induce Stable Dome Morphogenesis on Extracellular Matrix, Journal of Cell Science, 133, jcs243865 (2020).

Y. Kumagai, J. Nio-Kobayashi, S. Ishida-Ishihara, H. Tachibana, R. Omori, A. Enomoto, S. Ishihara, and H. Haga: The intercellular expression of type-XVII collagen, laminin-332, and integrin-β1 promote contact following during the collective invasion of a cancer cell population, Biochem. Biophys. Res. Commun., 514, 1115-1121 (2019).

北大研究者総覧参照
https://researchers.general.hokudai.ac.jp/profile/ja.K6kRFVurrafZ9RWNSKrWFw==.html

備考

<オフィスアワー>
・訪問受け入れ日時:講義期間中はいつでも
・居室:理学部2号館6階2-612室
※不在の場合があるため下記メールアドレスへ事前連絡の上来室してください。
haga[at]sci.hokudai.ac.jp

所属