
がんは「硬い」病気です。例えば、乳がんは「しこり」として見つかることも少なくありません。
がんの「硬さ」に注目して研究しているのが、石原 誠一郎(いしはら せいいちろう)助教(先端生命科学研究院)です。プレスリリース「カギは『硬さ』だった!がんが悪くなる仕組みを発見」(2025年3月13日)について、石原助教にインタビューしました。
なぜ、この研究を行ったのですか?
がんの多くが硬いことは昔から知られていました。硬いことで、がんは悪化するようです。しかし、どのような仕組みで悪くなるのかは、ほとんど分かっていませんでした。
どのように研究しましたか?
私たちは、がん細胞を容器の中で育てています。細胞を載せる足場をいろいろな硬さに変えて、がん細胞にどのような影響があるか調べました。

何が分かりましたか?
がん細胞ではATF5というタンパク質が多くなります。足場が硬いとATF5が細胞の核に集まることを発見しました。核に集まることでATF5が強く働くことも分かりました。
またATF5を抑えると、がん細胞の数が減ることも確認しました。つまりATF5が増えないようにすれば、がんの悪化を防ぐことができそうなのです。

研究結果から期待されることは?
がん細胞は、どんどん増える特徴があります。今、使われている抗がん剤は、増える細胞を攻撃するように作られています。正常に増える細胞も攻撃するため、髪が抜けるなどの副作用が起こるのです。ATF5を狙えば、がん細胞だけに効く薬を作れる可能性があります。
薬が実現するといいですね。
がんは人を不幸にしてしまうと思います。患者さんはもちろん、周りの人、家族などもです。がんを科学的に理解することで、苦しむ人を助けられる。そんな研究ができればと思っています。
