先端生命科学研究院・生命科学院では所属の大学院生に対する「スキルアップ支援」を実施しています。
対象は、生命科学専攻(生命融合科学コース)またはソフトマター専攻に所属する、「MC-DC一貫短縮修了コース(※)」の学生、及び博士課程への進学を希望する優秀な学生です。学生の研究能力向上のため、学会参加などへの支援を行います。
(※優秀な学生を対象に、標準修業年限(修士課程2年、博士後期課程3年)を短縮(修士課程1-1.5年、博士後期課程2-2.5年)しての博士学位の取得を目指すコース)
支援を受けた学生によるレポートを紹介します。
生命の新たな理解へ
河村 綸太郎(かわむら りんたろう)
生命融合科学コース・修士課程・2年
細胞分子機能科学研究室
私は,タンパク質の動きや,物理化学的な性質に着目して研究を行っており,生物学的な現象を物理学の理論により表現し,生物学に対し新たな理解を生み出すことはできないのだろうかと日々研究を進めている.
東京大学・理学系研究科の岡田康志博士が代表を務める新学術領域「情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理」領域会議には昨年度から継続して参加しており,異文化研究者との交流を継続するために,今回の領域会議にも参加したいと考えていた.現在,私は奨学金を受給中であるが,旅費などの研究関連予算がない状況である.このような中で,旅費として利用できる生命融合科学コースのスキルアップ支援制度があることを知り,この制度に応募し活用するに至った.
この新学術領域は,理論物理・情報物理学を専門とする研究者と分子や細胞などを扱う生物学者が集い,新たな観点から生命の理解を試みるというものである.生物系の研究者にとっては聞き馴染みのないであろう「情報物理学」とは,ここ2,30年で急発展を遂げた理論である.生物学者による実験とこの理論を組み合わせ,発展させることで,ゆらぎやノイズのある複雑な挙動を示す生物のいくつかの系を理論的に説明できるようになったため,決して生物学から遠い分野ではない.
今回参加した領域会議では,これまでの領域会議とは異なり,ポスター発表だけでなく,「情報物理学の未来について」というテーマで物理系と生物系の研究者を混合したグループディスカッションの時間が設けられた.
この討論会は,普段関わることのない研究分野の方たちと議論する貴重な時間となった.それだけでなく,分野が変われば,思考の方法やモチベーションなどが大きく異なることを改めて実感した.また,異なる分野の研究者とも議論することで,自分の研究を大局的な視点から捉えることも重要だと認識した.まさに今,新たな生物学が醸成されつつある会議に参加でき,大変貴重かつ充実した時間を過ごすことができた.
このように普段の研究生活から離れ,異なる研究者との交流を行うことは,新たな研究テーマの発想やさらなる研究意欲の向上につながる.後輩の皆さんには,このスキルアップ支援をぜひとも活用し自身の研究に活かしてほしいと思う.